「ベンチプレス、あと2.5kgがどうしても遠い……」
筋トレをしている人なら、誰しも一度はこの壁にぶつかるはずです。
私のスペックは体重70kg。ベンチプレスのMAXは85kg。 いわゆる「中級者の入り口」までは順調に来たものの、そこからここ3か月間、ピクリとも重量が伸びない完全な停滞期に陥っていました。
フォームを見直しても、セット数を変えても、85kgの壁は分厚いまま。ジムに行くのが少し憂鬱になっていた時期でもありました。
そこで、ついに禁断の扉を開けることにしました。 ロシアン・パワーリフティング由来の鬼プログラム、『スモロフジュニア(Smolov Jr.)』です。
ネットで検索すれば「とてつもなく伸びる」という絶賛と、「関節が爆発する」「精神が崩壊する」という悲鳴が同時に聞こえてくるこのプログラム。
「3週間で劇的に伸びるが、その代償も大きい」
そんな噂のプログラムを、実際に私の身体(主に関節と神経)を捧げて人体実験してみました。 結論から言うと、結果は衝撃の「+10kg(MAX95kg)」。
しかし、その代償として味わった疲労感についても、これから挑戦する人のために包み隠さず記録します。
そもそも「スモロフジュニア(Smolov Jr.)」とは?
ご存じない方のために簡単に説明すると、スモロフジュニアは、ソビエト連邦のセルゲイ・スモロフ氏が開発したスクワット用プログラムを、ベンチプレスなどに応用した短期間の集中強化プログラムです。
一言で言えば、「高頻度・高ボリュームの暴力」。 身体が回復する暇を与えず、強制的に負荷に適応させる「ショック療法」のようなものです。
基本ルール
- 期間: 3週間(+1週間の休息・測定)
- 頻度: 週4回(例:月・水・金・土)
- 内容:
- Day 1: MAXの70% × 6回 × 6セット
- Day 2: MAXの75% × 5回 × 7セット
- Day 3: MAXの80% × 4回 × 8セット
- Day 4: MAXの85% × 3回 × 10セット
これを3週間繰り返します。週が変わるごとに、使用重量を2.5kg〜5kgずつ上乗せしていきます。 「週に4回ベンチプレスをする」「最終日は10セットやる」という時点で、普通の神経なら「やりすぎ」と判断するボリュームです。
いざ検証開始!地獄の3週間ドキュメント
私のスタート時のMAXは85kg。これを基準に重量設定を行いました。
【1週目】「寝ても寝ても眠い」謎の現象
初週の重量設定は以下の通りでした。
- Day1: 60kg (6回6セット)
- Day2: 65kg (5回7セット)
- Day3: 67.5kg (4回8セット)
- Day4: 72.5kg (3回10セット)
初日と2日目は「あれ、意外と軽い? これなら余裕かも」と感じていました。しかし、その慢心はDay4で打ち砕かれます。 「3回×10セット」が終わらないのです。インターバルをいくら取っても、まだセットが残っている絶望感。
そして翌日、異変が起きました。 「疲れが、取れない」
いつも通り7〜8時間の睡眠を確保したはずなのに、朝起きると体が鉛のように重いのです。筋肉痛というより、体の芯がダルい。 コーヒーを飲んでも目が覚めない。これがスモロフジュニア名物、中枢神経系(CNS)の疲労の始まりでした。
【2週目】ゾンビ状態でジムへ向かう
2週目は、全てのセット重量を2.5kgしました。 たった2.5kgですが、蓄積疲労がある状態での増量は、体感5kg以上の重さに感じます。
- 関節の違和感: 肘と肩のフロント部分に、「ピキッ」という嫌な予兆が出始めました。
- 精神状態: 仕事中も、食事中も、常に頭の片隅に「今日のベンチプレス」のプレッシャーがあります。
一番きつかったのは、やはり慢性的な全身の倦怠感です。 ジムに向かう足取りは重く、更衣室で着替えている時が一番帰りたかった(笑)。 それでもラックの前に立ち、バーベルを握ると、不思議とスイッチが入ります。
「やらなきゃ終わらない」という強迫観念とアドレナリンだけでバーベルを挙げていました。
この頃には、日常生活でも「階段を上るのが億劫」「スマホを持つのすらダルい」という、バッテリー残量10%の省エネモードで生きていました。
【3週目】無の境地と「軽さ」の覚醒
最終週。さらに+2.5kg(初週から計+5kg)の上乗せです。 ここまで来ると、もはや筋力トレーニングではなく精神修行です。
しかし、ここで不思議な現象が起きます。 体はボロボロで、疲労困憊のはずなのに、バーベルを持った瞬間だけ「軽い」と感じるのです。
高頻度で反復し続けた結果、脳と神経が完全に「ベンチプレス特化型」に書き換わっていました。 「あ、この軌道なら絶対に挙がる」 フォームの迷いが一切消え、無駄な力が抜けている感覚。これがスモロフの効果か…!と実感した瞬間でした。
最終日の「Day4:77.5kg × 3回 × 10セット」を完遂した時は、達成感よりも「やっと明日からベンチをしなくていいんだ」という安堵感で、ベンチ台に崩れ落ちました。
運命の結果発表:3週間で何キロ伸びた?
プログラム終了後、4日間の完全休養を取りました。 この4日間は、本当に何もしませんでした。ひたすら食べて、泥のように眠りました。ここで疲労を抜かないと、MAX更新はありえません。
そして迎えた測定日。 体重は70kg(変化なし)。バーベルのアップを始めると、明らかに挙動が軽い。
- 1本目:85kg(前回のMAX) → ゴミのように軽く挙がる。
- 2本目:90kg(自己ベスト更新) → スティッキングポイントすら感じずクリア。
- 3本目:95kg(未知の領域) → ……
ラックアップした瞬間、重さは感じましたが、ボトムからの切り返しで爆発的に力が伝わりました。 挙がった。
- Start: 85 kg
- Finish: 95 kg
結果:まさかの +10kg 達成!!
正直、自分でも目を疑いました。 通常、ある程度トレーニングを積んだ人間が、重量を10kg伸ばすには半年〜1年はかかります。それがたった3週間(+調整週)で10kg。
「スモロフジュニアは効果があるか?」と聞かれたら、私は食い気味に「ある!!ものすごくある!!」と答えます。
検証してわかった「光」と「闇」
この劇的な効果の裏には、相応のリスクと注意点がありました。
メリット:なぜここまで伸びるのか?
- 強制的なプラトー打破 普通の刺激に慣れてしまった身体に、ショック療法として劇的な効果があります。「停滞している」という脳のリミッターを強制解除する感覚です。
- 神経系の適応が凄まじい 筋肥大というよりは、「今ある筋肉を100%使い切る」能力が向上します。高頻度で行うことで、フォームが達人級に洗練されます。
デメリット:覚悟すべき2つのこと
1. 「疲れが取れない」はデフォルトと思え
私が一番きつかったのは、関節痛よりも「回復が追いつかない絶望的な疲労感」**でした。 いつもと同じ時間寝ても、全く疲れが抜けません。これは筋肉の疲れではなく、神経が焼き切れているからです。 期間中は「トレーニングして、食べて、寝る」以外の活動は全てキャンセルする覚悟が必要です。
2. 他の種目は一切やるな
「ついでにスクワットやデッドリフトも…」なんて考えは捨ててください。 リソースの全てをベンチプレスの回復に回さないと、途中で潰れます。私は期間中、他の部位は完全に維持か、休止しました。補助種目(三頭筋など)をやる余裕も1ミリもありません。
これからスモロフジュニアに挑むあなたへ
もしあなたが、「最近ベンチが伸びない」「どうしても100kgの壁を超えたい」と悩んでいるなら、スモロフジュニアは最強の起爆剤になります。
ただし、以下の3つを約束してください。
- カロリーを恐れずに摂る(減量中は絶対にNG)
- 違和感があったら即中止する勇気を持つ(怪我したら元も子もない)
- アクセサリー種目は全カット(ベンチだけに命を懸ける)
スモロフジュニアは、「諸刃の剣」です。 しかし、リスクを管理し、覚悟を持って挑めば、分厚い壁をぶち破る最強の武器になります。
体重70kgの私が95kgまで一気に駆け上がれたこの魔法。 次の3週間、あなたもその身をもって体験してみませんか?
(※ただし、挑戦は自己責任でお願いします。マジで疲れます。)
