「Nothing beats a Jet2 holiday(ジェットツーのバカンスに勝るものはない)」という言葉を見聞きして、思わずクスッとしたことがある人も多いかもしれません。英国で生まれたこのシンプルなキャッチコピーは、いまやTikTokやX(旧Twitter)で数々のミームのネタにされるほどの“文化的ネタ”に進化しています。
いったいなぜ、ただの旅行CMの一言が、ここまでネット民に愛されることになったのでしょうか?
◆ Jet2holidaysとは何か?
Jet2holidaysは、イギリスの格安航空会社Jet2.comが提供しているパッケージ旅行サービスです。LCCの手軽さと、ホテル・空港送迎を含んだオールインワン型の旅行を売りにしており、スペイン、ギリシャ、カナリア諸島などの人気リゾート地への家族旅行に強みがあります。
テレビCMやYouTube広告を中心にプロモーションを展開しており、特に「家族旅行」「陽気」「コスパの良さ」を全面に押し出した構成が特徴です。
◆ ミームの発祥:まじめなCMがジワる
このフレーズ「Nothing beats a Jet2 holiday」は、2022年に放送されたJet2holidaysのCMでナレーションとして登場した言葉です。
イギリスの女優ゾーイ・リスター(Zoe Lister)のナレーションで、感動的な音楽(Jess Glynneの “Hold My Hand”)とともに、太陽と海に囲まれた幸せな家族の姿が映され、最後に満面の笑みとともに高らかに言い放たれます。
“Nothing beats a Jet2 holiday!”
直訳すると「Jet2の休暇に勝るものはない」──この何の変哲もないセリフが、なぜここまでバズったのでしょうか?
◆ なぜウケた?バズの3要素
① 真面目すぎて逆に面白い
映像もナレーションも完璧に陽気でキラキラ。でもそのテンションに反して、「Jet2holidaysで普通に海行ってるだけ」の内容。
“全力で宣伝してるのに、全然派手じゃない”──このギャップがジワジワ来ます。
② ミームとして汎用性が高すぎる
“Nothing beats 〇〇”という構文は、英語では定番の決まり文句。
たとえば:
- Nothing beats mom’s cooking.(お母さんの料理に勝るものはない)
- Nothing beats a cold beer after work.(仕事終わりのビールに勝るものはない)
この構文の“適当さ”がネット民に火をつけました。
例:
- Nothing beats falling down the stairs.
- Nothing beats your cat vomiting at 2am.
- Nothing beats student debt.
③ TikTokと“カオス”の親和性
TikTok上では、Jet2の音声「Nothing beats a Jet2 holiday!」を音源として使った動画が爆発的に拡散。
- 熱波で真っ赤になった人の肌
- ビーチで雨に降られて顔面蒼白
- 飛行機遅延で空港の床で寝る家族
といった“地獄みたいな旅行シーン”に、この能天気な音声を重ねるギャグ構成が鉄板化。2024年夏までに数十万件の派生動画が作られ、Jet2の公式も「乗っかり型」の反応でさらに拡散を後押ししました。
◆ 公式の“神対応”が拡散を加速
Jet2holidaysの公式TikTokアカウントもこの流行を受けて、乗務員が「Nothing beats a Jet2 holiday!」と口パクする動画や、オフィスでこの音源を使った“踊ってみた”動画を投稿。
企業がミーム文化に「ツッコミを入れない」という選択をすることで、ユーザー側は「これ公式もわかってるな」と感じ、むしろ好感度がアップ。
◆ Know Your Memeでも登録された
ミーム専門百科「Know Your Meme」でもこのフレーズが2024年にエントリーされ、解説記事では以下のようにまとめられています。
「Nothing beats a Jet2 holidayは、2020年代中盤のイギリスのTikTokで最も成功したCMフレーズミームの一つである。」
つまり、「自社CMが勝手にミーム化 → 企業がそれに乗る → さらに拡散」という、現代型マーケティングの好例なのです。
◆ まとめ:ミームになるCMの条件
Jet2の一件から学べることは多くあります。特に、ミームとしてCMをバズらせるには以下の2つの要素が鍵になりそうです。
- 汎用性の高い決めゼリフ
- 映像とセリフに「ズレ」や「違和感」があること
◆ おまけ:あなたも今日からミーム職人
TikTokで「#Jet2holiday」と検索してみましょう。思わず笑ってしまう「地獄旅行 × 楽観ナレーション」のコンボが山のように出てきます。
例のナレーションは音源として使えるので、自分の日常の悲劇を重ねることで、立派なミーム作品を作ることができますよ。
📢 “Nothing beats a Jet2 holiday!”
(Jet2のバカンスに勝るものはない…⁉)