Italian Brainrotとは何か
Italian Brainrot(イタリアン・ブレインロット)は、2025年1月以降、TikTokやInstagramを中心に若者の間で爆発的に広まった“AI生成ミーム”です。
AIが創り出した動物やキャラクターに、リズミカルなイタリア語風フレーズをテキスト読み上げで重ねるというシンプルかつナンセンスな手法が、意味不明な中毒性を生み出しています。
本稿では、その起源と広がり方から、コンテンツ設計、ユーザーの受容構造、制作環境までを丁寧に紐解きます。
起源と拡散経路
初投稿
Italian Brainrotの最初期とされる投稿は、2025年1月初旬、TikTokユーザー @eZburger401 が公開した「Tralalero Tralala」というAI生成動画です。
鮫のイラストに「Tralalero Tralala, porco dio e porco Allah…」といった意味不明なイタリア語風フレーズを重ね、17万回以上再生される大ヒットとなりました。
同アカウントは後に抹消されましたが、1月8日には @elchino1246 が同じ音源を用いてサメに鳩の足を生やしたバリエーションを投稿し、再生数1.9万回・いいね422件を獲得しました。
バイラル化の要因
TikTok上での「短尺+リピートしやすいリズム」というフォーマットにマッチしたことが、爆発的な拡散の一因ですTikTok。
3月中旬には「Bombardiro Crocodilo(爆撃機×ワニ)」や「Lirili Larila(サボテン×象)」など多数の派生作品が量産され、ハッシュタグ #ItalianBrainrot は数日で100万再生を突破しました。
さらにInstagramリールやYouTube Shortsにも波及し、イギリス、ブラジル、インドネシアなど世界各地で各国語版が登場。インドネシアでは “Tung Tung Tung Sahur” のようなスピンオフが生まれるなど、グローバル展開を見せています
コンテンツの共通要素
AI生成のビジュアル
Italian Brainrotでは、Stable DiffusionやMidjourney 等のノーコードAIツールで作られた ざっくりとした輪郭・アンバランスなディテール が特徴です。
- 動物+無関係オブジェクト(戦闘機、果物、靴など)のハイブリッド
- 背景は単色かグラデーションで目立たせる
これにより「不気味の谷」を回避しながら、視覚的に強い違和感を残す作品が量産されています。
イタリア語風テキスト読み上げ
音声部分は、AIテキスト音声合成(e.g. OpenAI Whisper+TTS)を利用し、
- 韻を踏む短いフレーズ
- 語尾を伸ばす抑揚
- 時おり下品なワード
を繰り返すことで耳に残る中毒ループを構築。意味を理解できないこと自体が、「次は何を言うんだ?」という好奇心を煽ります。
若者文化との親和性
Z世代/α世代の特性
- 短尺・ループ重視:15~30秒の動画を繰り返し視聴
- 雰囲気重視:ストーリーや深い意味よりも“感覚”を楽しむ
- 参加型ミーム:誰でもリミックス、再投稿できるテンプレート志向
Italian Brainrotはこれらの文化的トレンドと完璧にマッチし、消費→制作→共有のサイクルを高速回転させています。
中毒性の心理モデル
- 違和感の快楽:ほどよい不快感がドーパミンを刺激
- ソーシャルプルーフ:フォロワーが笑っている→自分も試したくなる
- 真似のしやすさ:テンプレートが公開され、誰でもコンテンツを生み出せる
以上のメカニズムが、Italian Brainrotを「見るだけで済まない体験」へと昇華させています。
AI制作
主なツール
- Stable Diffusion / Midjourney(画像生成)
- OpenAI Whisper + TTS(音声合成)
- CapCut / VN / Premiere Rush(スマホ動画編集)
テンプレート配布とコスト
- TikTokエフェクト & プロジェクトファイル共有
- 無料プランで完結:スマホ一台で量産可能
- コミュニティ主導のリミックス文化:二次創作が即座に広がる
これにより、高い制作コストや技術不要で爆発的なミーム量産が実現しました
有名な作品
Tralalero Tralala
Italian Brainrotを最初に世界に知らしめたのは、TikTokユーザー@eZburger401による「Tralalero Tralala」系動画です。
AI生成のサメのイラストに「Tralalero Tralala, porco dio e porco Allah…」とイタリア語風リズムを重ね、公開わずか数日で17万回再生を記録しました。
この成功を受け、同音源を流用した派生作品が続出。トレースやコラージュを経て、“Tralalero”はBrainrotコミュニティのスタンダードとなりました。

Bombardiro Crocodilo
2025年2月中旬には、「Bombardiro Crocodilo」という新キャラクターが登場。
ワニの顔をもつ爆撃機という奇抜なビジュアルと、「Bombardiro Crocodilo, grido d’amore al mercato nero…」といったリズミカルな音声が話題を呼び、TikTokで10万回以上シェアされました。
この成功により、「動物×兵器」「韻を踏むフレーズ」といったBrainrotの典型フォーマットが確立されました。

Ballerina Cappuccina
バレエダンサーとカプチーノの融合というシュールなAIビジュアルに、「Ballerina Cappuccina, danza lenta sotto la luna…」と語りかける音声がマッチし、再生2,200万回・いいね220万件を獲得しました。
このバリエーションは、イタリアン・ブレインロットの多様性を示す代表例となっています。

tung tung tung tung sahur
インドネシア代表としてtung tung tung tung sahurというbrainrotも登場しました。
“Tung tung tung” は、インドネシア・マレーシアのラマダン期間中、日の出前の礼拝(サフール=朝食)の合図としてベドゥグ(大太鼓)を叩く音のオノマトペです。
“Sahur” は、そのサフール食を指し、「三度呼ばれて起きないと、このキャラが来る」という都市伝説風の煽りに変換されたのがミームの核です

タニマーニオオターニ
日本の代表としてタニマーニオオターニと呼ばれるbrainrotも登場して人気を集めています。
これは有名な野球選手である大谷選手がメガネをかけた男性の谷間に挟まっているという画像です。
日本語での韻を踏んだ名前とシュールな画像が人気の理由となっています。

企業タイアップ
ミームオブザマンス受賞
2025年3月、Know Your Memeは「Bombardiro Crocodilo」を3月のMeme of the Monthに選出しました。
この発表を受け、InstagramやFacebook上でも大きく取り上げられ、一般メディアへの波及効果が確認されました。
広告活用の兆し
米国の小規模企業が、AI音声を使ったItalian Brainrot風の短尺CMを制作開始。
「Bombardiro Crocodilo」のフォーマットを応用し、自社製品名をリズミカルに韻踏みさせる試みがSNS広告でテスト配信されています。
これにより、ミーム文化がマーケティングチャネルとしても注目を浴び始めました。
KFC
4月18日にKFC(ケンタッキー・フライド・チキン)がbrainrotとコラボし、商品が出されることが決定し、注目を集めています。
https://www.tiktok.com/@kfc_es/photo/7493921683745688854?is_from_webapp=1&sender_device=pc
まとめ
Italian Brainrotは、AI生成キャラと謎のイタリア語風フレーズが組み合わさった中毒性の高いミームです。意味はなくともリズム感と見た目のインパクトで世界中に拡散。TikTokを中心に爆発的に広まりました。Tung Tung Sahurやタニマーニ・オオターニなど、各国で独自の派生も生まれています。意味不明さを楽しむ“思考停止系コンテンツ”の代表格です。
皆さんもぜひbrainrotを生成してみてください。