2025年夏、地球の回転速度が異例の加速を見せ、「最短の日」が続出。
世界初の「マイナスうるう秒」導入の可能性と、私たちの生活・インフラへの影響を初心者向けにまとめました。
突然ですが、「1日がいつもより1.5ミリ秒短い」日があるとしたら…気づきますか?
2025年7月9日、7月22日、8月5日と、地球は連続して“最短の日”を記録しました。
この小さな“ずれ”が積み重なると、世界中の時計を修正するために初の「マイナスうるう秒」が必要になるかもしれません。
この記事では、「地球の自転加速」「マイナスうるう秒」という話題をやさしく解説します。
▼この記事でわかること
- 地球の自転が加速するメカニズム
- 正のうるう秒とマイナスうるう秒の違い
- 導入の背景と最新動向
- 生活・インフラへの具体的な影響
- 今後の制度廃止・代替案の展望
- 初心者向けQ&A&まとめ
1. 地球が「最短の日」を連発するワケ
2025年7月9日、地球は通常の24時間より約1.3〜1.6ミリ秒短い「最短の日」を記録しました。
さらに7月22日には約1.34ミリ秒、8月5日には約1.25ミリ秒短縮されると予測され、わずか数週間の間に3回も連続して最短日が発生。
「1ミリ秒=0.001秒」ですから、私たちの日常生活ではほとんど気づきませんが、時刻同期を厳密に行うシステムには大きな「ずれ」です。
- 7/9:–1.34ms
歴代でもっとも短い日のひとつ - 7/22:–1.34ms
同様の値を連続記録 - 8/5:–1.25ms
記録更新のペースは2020年以降で最速
Point! 短い日が増えている背景には、
・月の位置変動
・地球内部の動き
・氷河融解による質量分布の変化
が複雑に絡んでいます。
こうした「短日」は従来、数年に1回程度だったのが、近年は夏季を中心に頻度が上昇。
専門家たちは「新しい地球物理学的フェーズに入ったのかも」と注目しています。
2. 地球の回転が速くなるメカニズム
地球の自転速度は、以下の3大要因で日々わずかに変動しています。
2-1. 月と潮汐力
月は地球に強い潮汐力を及ぼし、通常は自転を徐々に遅らせます。
しかし、月が赤道面から大きく離れるタイミングでは潮汐減速効果が弱くなり、その間だけ地球が速く回ることがあります。7/22の短日もこれが一因とみられています 。
2-2. 氷河融解と質量再分配
極地の氷床が融けると、水は重力によって赤道付近へ移動。
角運動量保存の原理により、質量が赤道に集まるほど自転が速くなるのです。地球温暖化の影響が長期的に自転速度にも影響を与えつつあります 。
2-3. 内部コアと大気海流のダイナミクス
地球内部の液体外核やマントル対流、大気や海流の変動も微妙にスピードを調整。
これらは数十年〜数百年スケールの長期トレンドを作り出しますが、近年は短期変動の振れ幅が大きくなっています。
3. 「うるう秒」とは?正のうるう秒 vs. マイナスうるう秒
協定世界時(UTC)と地球の自転時間(UT1)は少しずつずれるため、ズレを調整するのが「うるう秒」です。
1972年に始まり、2022年までに計27回の「正のうるう秒」(1秒追加)が実施されました。

正のうるう秒――1秒を追加
例えば2016年末の正のうるう秒では、23:59:59 の次が 23:59:60 となり、さらに午前0時へ進む仕組みでした。
マイナスうるう秒――1秒を削除
今回議論されているのは、「うるう秒」を逆転させる初の試み。
地球が速く回っている場合に 08:59:58 の次が 09:00:00 となり、1秒を削除することでズレを補正します。
Check! マイナスうるう秒は今までの歴史に一度もない「世界初」のチャレンジ。
4. なぜ今、マイナスうるう秒が検討されているのか?
2025年夏の「最短の日」連発は偶然ではありません。
国際地球回転・参照系事業体(IERS)や米国標準技術研究所(NIST)は、地球の自転加速が予想以上に進んでいると認識し、初のマイナスうるう秒導入を真剣に検討しています。
- 導入予測確率:約30〜40%
2029年頃までに実施される可能性あり - 廃止決議の影響
2035年までのうるう秒制度廃止決定が逆に導入手続きを促進している側面も - 技術的課題
多くのシステムが「秒を追加する」想定で設計されており、秒を削除する想定は未検証
Tech Alert! マイナスうるう秒のソフト実装は未テスト。システム障害リスクが高いため、IT大手は慎重姿勢を崩していません。
次回のIERS会合では、導入の可否を巡り激論が交わされる見込みです。
5. マイナスうるう秒が導入されたら?──“1秒削除”のインパクト
もし実際にマイナスうるう秒が導入されると、次のような“1秒削除”の影響が予想されます:
- サーバー&ネットワーク障害
過去の正のうるう秒(2016年末など)では、Linuxカーネルや大規模Webサービスでタイムスタンプずれが原因の障害が発生。マイナスうるう秒は未実装ケースが大半なので、秒を「飛ばす」処理への対応が追いつかず、同様以上の障害リスクが高まります。 - 金融市場のトレードシステム混乱
高速取引(HFT)や証券取引所はミリ秒単位での時刻同期が必須。1秒分のデータが消失することで、ログの整合性が崩れ、取引約定や決済処理にズレが生じる可能性があります。 - 航空機および衛星ナビゲーションへの影響
航空管制システムやGPS衛星も正確なUTCを基に運用。1秒の「なかったこと」は航空便スケジュールや位置情報計算に誤差を生み、安全性にかかわる問題を引き起こす恐れがあります。 - IoT・スマート家電の時間ずれ
スマートロックや検針メーターなどIoT機器はサーバーと定期的に時刻同期。導入直後は「1秒飛ばし」への対応が不十分で、ログ記録の欠落や動作不具合が起きやすくなります。
注意:「秒を追加する」正のうるう秒と異なり、「秒を削除する」実装はほとんど試されたことがありません。各社・各国のインフラベンダーは今からテストと対策が急務です。
実際、主要OSやミドルウェアの多くは「23:59:60」を想定したバグ修正を行ってきました。
しかし「08:59:58 → 09:00:00」のように秒を飛ばすロジックは未整備。導入時には、世界中で大規模な“時間障害”が起こる可能性があります。
6. うるう秒制度の廃止と代替案──2035年以降のビジョン
この乱高下を受けて、国際度量衡総会(CGPM)は2035年までにうるう秒制度そのものを廃止する決議を採択しました。
これを受け、ITU(国際電気通信連合)や各国標準機関は、新しい時間調整方法の検討を進めています。
6-1. 「うるう分」方式の提案
小刻みな「秒」調整ではなく、数十年に一度まとめて1分単位でズレを補正する方式。例:2050年にUTCを1分進めて、その後しばらくは調整不要とする案です。
6-2. 「うるう時間」方式の提案
さらに大きくまとめて1時間単位で調整し、システム側の実装負荷を大幅に軽減する大胆案。数世紀に一度の補正で済むため、インフラリスクを最小化できます。
6-3. 技術大手企業の動向
GoogleやAmazon、MicrosoftといったIT大手は既に「うるう秒廃止」を公言し、自社サービスでの対応を開始。
AWSやAzure、Google Cloudは正のうるう秒対応で蓄積したノウハウを活かし、新方式への移行プランを策定中です。
Key Point:制度廃止後も、
・科学研究用タイムスタンプ
・宇宙・航法システム
・金融取引
などでは「天文時(UT1)」との関係を参照し続けるため、何らかの形での調整機構は残ります。
制度廃止の動きに伴い、「なぜ時間を正確に計るのか?」という根本的な問いも再燃中。未来の時間管理は、やや大きな単位での調整を前提に、システム設計を根本から見直すフェーズに入っています。
7. よくあるQ&A(初心者向けFAQ)
Q1. マイナスうるう秒はいつ実施されるの?
現時点では正式日程は決まっていませんが、国際地球回転・参照系事業体(IERS)の最新予測によると、2026年~2029年のいずれかに導入される可能性が高いとされています。
導入確率は約30~40%との見方もありますが、気候変動等による自転速度の変化次第で前後する可能性があります。
Q2. 私のスマホやパソコンに影響はある?
日常のアプリ利用にはほとんど影響ありませんが、クラウド同期や金融取引、GPSなどミリ秒単位の時刻同期を必要とするシステムは要注意。
正のうるう秒導入時にも一部のサーバーでログ欠損や同期エラーが起きており、マイナスうるう秒導入ではさらに未検証の挙動が懸念されます。
Q3. 正のうるう秒と何が違う?
- 正のうるう秒:地球が遅く回ったときに1秒「追加」する調整。過去27回実施。
- マイナスうるう秒:地球が速く回ったときに1秒「削除」する調整。まだ一度も実施例なし。
追加と削除、正反対の操作です。秒を削除する処理はほとんどのシステムで未実装なので、開発・テストが急務となります。
Q4. 気候変動との関係は?
極地の氷床融解で融けた水が赤道付近へ移動すると、地球の角運動量保存により自転速度が速くなると考えられています。
将来的に極地氷がさらに融ければ、一時的にマイナスうるう秒が必要になる可能性も。ただし氷の再凍結や他要因で再び遅くなる可能性もあるため、長期予測には不確定性があります。
Q5. 日本ではどう準備が進んでいる?
日本国内の標準時刻を管理する標準時刻センターやNICT(情報通信研究機構)はIERS勧告を受け、システム検証・改修計画を立てています。
電力会社、鉄道、金融機関など社会インフラを担う各事業者とも連携し、段階的なテストを実施中です。
8. まとめ&読者への呼びかけ
- 2025年7月、地球はわずか1.3~1.6ミリ秒短い「最短の日」を記録。地球の自転速度が異例の加速を示しています。
- 従来のUTC調整は「正のうるう秒」(1秒追加)でしたが、今後初めての「マイナスうるう秒」(1秒削除)が必要になる可能性があります。
- マイナスうるう秒の実装は未経験で、サーバー障害や金融取引エラー、航空機システム混乱など幅広いリスクが懸念されます。
- 2035年までにうるう秒制度そのものを廃止し、「うるう分」「うるう時間」といった代替案へ移行する動きが国際的に進行中です。
地球の「ミリ秒」単位の動きが、私たちの生活や社会インフラにまで影響を及ぼす──まさに“時代を刻む”重要なトピックです。
この記事が「時間って深い!」と思うキッカケになれば嬉しいです。
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- もしマイナスうるう秒が導入されたら体験してみたいこと
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