『Dear Basketball』とは?コービー・ブライアントが残した名作とトレンド再燃の理由

最近TikTokを眺めていると、「Dear Basketball」という少し不思議な音声に合わせて、バスケットボールのシュートを失敗する動画や、サッカーでボールを顔面に当てる動画を見かけた人も多いのではないでしょうか。
「これって何の音声?」「なんで失敗シーンと組み合わさってるの?」と疑問に思った人もいるはずです。

実はこのトレンドの元ネタは、バスケットボール界の伝説・コービー・ブライアント(Kobe Bryant) が残した詩「Dear Basketball」。2017年に短編アニメーションとして映画化され、アカデミー賞まで獲得した由緒正しい作品なのです。
ところが2025年、なぜかその音声がTikTokで“失敗シーンのBGM”として大流行しているのです。

前編では、この「Dear Basketball」という作品そのものと、TikTokでのトレンド化の始まりを掘り下げていきます。


目次

「Dear Basketball」とは何か?

まず元ネタを整理しておきましょう。
「Dear Basketball(ディア・バスケットボール)」は、2015年にコービー・ブライアントが現役引退を発表した際に発表した詩です。

タイトル通り「親愛なるバスケットボールへ」と呼びかける形式で、幼い頃からの夢、情熱、そして競技人生の終わりを静かに語りかける内容になっています。

この詩は2017年にアニメーション短編映画化されました。

監督を務めたのはディズニーの名アニメーター グレン・キーン(Glen Keane)。音楽は『スター・ウォーズ』や『ジュラシック・パーク』の音楽で知られる ジョン・ウィリアムズ が担当し、映像と音楽が一体となった美しい作品に仕上がっています。

映画「Dear Basketball」は、2018年の第90回アカデミー賞で短編アニメーション賞を受賞。スポーツを題材にした作品としても異例の快挙でした。
つまり、元々は「偉大なバスケ選手の人生と愛情を描いた感動的な作品」だったわけです。


なぜTikTokで使われ始めたのか?

そんな荘厳で感動的な作品が、なぜTikTokで“笑える失敗シーン”と組み合わされて広まったのか。

きっかけは2025年7月7日、TikToker @mprodz.2 が投稿した動画でした。

この動画では「Dear Basketball」の音声をBGMに、シュートを大きく外したシーンを編集して投稿。コービーの朗読する真剣で情緒的なナレーションと、あまりにも残念なプレイが組み合わさり、そのギャップに多くのユーザーが爆笑したのです。
この一本の動画が瞬く間に拡散され、「Dear Basketball」音声を使ったパロディ動画が次々に投稿されるようになりました。


爆発的に拡散した理由

ではなぜ、ここまで爆発的に広がったのでしょうか?
要因は大きく3つあります。

① 感動と失敗のギャップ

朗読は静かで美しく、詩的で、聞くだけで「深いメッセージがあるのかな」と思わせます。ところが映像は、ボールを顔面にぶつけたり、ダンクに失敗したりと、完全にコメディ。
この「高尚さ × コメディ」の対比が、視聴者の笑いを引き出しました。

② シンプルで真似しやすい

動画の作り方はシンプル。「Dear Basketball」の音声を流し、スポーツの失敗シーンを載せるだけ。自分で撮った動画でも既存の映像でも応用できるので、参加のハードルが非常に低かったのです。

③ 普遍的な共感

誰しもスポーツや日常で失敗する瞬間があります。「頑張ってるのにうまくいかない」という経験は、視聴者自身の体験に重ねやすく、共感と笑いを同時に生みました。


拡散初期の代表的な動画

実際にバズった動画の一例を挙げると:

  • ジャンプショットをバックボードの裏に飛ばしてしまうシーン(いいね46万件)
  • NBAオールスターセレブリティゲームでラッパーDruskiがレイアップを外す映像(いいね130万件)
  • ダンクを試みてリングに届かず落下するシーン(いいね61万件)
  • サッカーでシュートが選手の顔に直撃する場面(いいね35万件)

いずれも「真剣に挑む → 大失敗」という展開に「Dear Basketball」が重なり、強烈なインパクトを残しました。

コービーへのリスペクトとの両立

一方で、このトレンドには微妙な側面もあります。
元ネタは故コービー・ブライアントが引退にあたり書いた“愛の告白”のような詩。彼はすでに2020年に事故でこの世を去っており、「Dear Basketball」は彼の遺産のひとつです。

それを「失敗シーンのネタ」に使うことに、違和感を覚えるファンもいます。
しかし一方で、ネット文化には「リスペクトを込めていじる」という側面もあり、完全に冒涜と片付けることもできません。
実際、多くの投稿者やコメント欄では「RIP Kobe」「彼の声が永遠に生き続ける」という言葉が見られ、笑いと敬意が同居していることが分かります。

他ジャンルへの広がり

「Dear Basketball」の形式は、スポーツ以外の分野でも応用されつつあります。

  • 料理に失敗したシーンに合わせて朗読を流す
  • ゲームで操作を誤った場面に合わせる
  • 学校のプレゼンや日常生活の“ドジ瞬間”を演出する

このように、「高尚な詩 × 失敗」の組み合わせはあらゆるジャンルに拡張可能。
TikTokのコメント欄では「次は自分の失敗に使ってみたい」と語る人も多く、ユーザー参加型のトレンドに発展しています。

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この記事を書いた人

理系国立大学生のYuuKishiです!将来のためブログを通して、マーケティングやライティング技術を学んでいます。

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